SPEC

機体解説

「もう一声お願いできない？」
愛想笑いの青年と相対する輸送部隊員は、無言の笑みで補給物資の発注書の一部項目を削除した。
それは青年からの値引き交渉に対する明確な拒否であった。

「悪運（アンラッキー）」と渾名される彼は、日々の報酬で自分専用の「バルクアーム」を組み上げるためパーツを収集していた。
輸送部隊護衛任務にあたり野戦改修型バルクアームを貸与された彼は、意外にも良好な機体性能に魅了されてしまった。
「ロードバスター」というペットネームまで（勝手に）与えていたほどに気に入っていたが、帰還途中に敵勢力と交戦し喪失してしまう。
だからこそ今度は、共有ではなく自分専用の機体を手に入れるために地道な収集活動を行っているのである。

彼は元々ブレイズボアを乗機としていたが、そのカスタムコンセプトは本来の仕様とは大きくかけ離れていった。
原型機の象徴ともいえるバイナリーハウルとウォールクリーグを撤廃し、脚部はホイールクローラーに換装。
オプション兵装のミサイルポッドとガトリングガンを装備させるなど、先述のロードバスターと同系統のものへと変更された。
これはロードバスターへの機種転換をスムーズに行うためと「悪運」は主張している。

本機のカスタムにおいて最も特徴的なのは、背部ユニットから踵部に接続されているサブフレーム機構である。
元来トップヘビーな機体であるうえ高速走行など本来のブレイズボアが想定しない機動を取るため、戦闘行動はおろか低速走行でも転倒必至な機体だった。
その問題を解消したのが、全身をサスペンション化する効果を生み出すサブフレーム機構であった。
これはブレイズボアの運用に革命をもたらす。「第4443野戦部隊」のエンジニアたちはそう考えた。

だがそうはならなかった。
なぜならブレイズボアに高い機動力と精密なバランスを付与するなど、彼らを除いた世界中の誰も思い至らない突飛な発想だからである。
結局この技術は事実上本機にのみ搭載されたニッチな代物として「念のために」LAの技術目録に記載されたという。

それでも「悪運」は本機で戦場を駆け回る。
いつの日かバルクアームのパーツを全て揃え、自分だけのロードバスターを作り上げるために。

……だが彼は知らない。
彼が自費で購入したパーツが同部隊で運用されているバルクアームの補修のために度々拝借されていることに。

BATTLE POINT

作品応募動機／作品に対するコメント

バルクアームが大好きです。
ブレイズボア？　コンセプトは小型化したバルクアーム！？
だったら作るしかないじゃない！