SPEC

機体解説

　巨人と機獣が戦場を席巻する時代にあってなお、純粋な車両型ヘキサギアが最前線を駆ける姿は稀ながら目撃される。ロアグレーダーと呼称される本機もその一例である。
　目撃情報によればいわゆる運び屋として依頼を遂行しているようだが、異常な重装備を有する事から、純粋な輸送力よりも危険地帯における輸送完遂を重視した強行輸送機と推察される。

　機体構成は、積載量と速度の両立が容易なビークル型を基礎に、並の戦闘ヘキサギアはおろか小規模の陸上艦にすら匹敵する量の武装・無人機・電子戦装備を擁する。それらをKARMAにより制御しているようだが、機体本体の制御が単純な分、KARMAの演算リソースは丸ごと装備類の運用に振り向けられており、ある意味ビークル型だからこそ可能な設計と言える。
　実戦では、各種レーダー・センサー類や無人機により戦域の中に突破点を見定め、ある時は豊富な妨害・欺瞞手段と機動力で潜り抜け、またある時は莫大量の火力投射と重装甲で押し通る。
　特筆すべきは一連の行動を数十分から時に数分単位の至短時間で終わらせる事であり、積荷を狙う敵対勢力が逆に奇襲を受け、反撃態勢を整える時間すら無く突破される事例も度々報告されている。
　また「砲火を掻い潜って正面からロアグレーダーに飛び掛かったヘキサギア数機が、見えないハンマーに殴られたかのように一斉に弾き飛ばされた」との証言も存在し、仮に事実であれば、何らかの特殊武装を有している可能性が高い。
　いずれにせよ、一見荒唐無稽にすら思える機体でありながら、その実はビークル型ヘキサギアの利点を最大限に活かしており、ビークルの扱いに精通したガバナーが携わっている事は想像に難くない。また、凄まじいであろう運用コストを供出するバックボーンが存在する可能性も指摘されている。

　世界がどれだけ形を変えようとも、そこに人の営みがある限り、人荷を運び届ける仕事が消えはしまい。
　まして、地獄のような戦火が至る所で渦巻く世界で、それでも届けねばならない物が、行かねばならない場所があるなら、地獄の底にすら道を拓く鉄火場専門の運び屋は、時に途絶えかけた希望を紡ぐ最後の一糸となるだろう。
　そして最後であればこそ、容易く絶たれる筈は無い。
　“咆える地均し機”の名を冠するそれが戦場を貫き通さんとする時、行く手を阻む者は悉く「存在しない」のである。

BATTLE POINT

作品応募動機／作品に対するコメント

　今まで色んなメカプラモ等に触れて来ましたが、ヘキサギア程にSFビークルを解像度高く創造できる手段は未だかつて無く、種々のSFコンテンツに触れてはメインのキャラクターやロボットよりオマケの戦闘車両や飛行メカに目を輝かせていた奇人にとっては、この上ない遊び場となっています。
　そんなビークル愛とヘキサギアへの感謝を、あらん限り込めたのがこの子です。込めすぎたのかかれこれ丸2年組み換えのアイデアがロクに出てきません。助けてください。