ガバナー アーマータイプ:ナイト【ビアンコ】 GOVERNOR ARMOR TYPE: KNIGHT【BIANCO】
設定解説
アーマータイプ:ナイト
これはポーンA1をベースに更に“騎乗戦”に特化した新型アーマーの開発計画であり、その概要はガバナーをより直接的に戦闘に参加する構成要素として扱うことで、第三世代ヘキサギアの戦闘能力を引き上げようというものであった。
要求仕様の上位を占める項目のほぼすべてが第三世代ヘキサギアの開放型操縦席による騎乗戦を志向しており、常時砲火に晒されるガバナーの生残性を飛躍的に向上させている。
本体の重装甲化は胴部の重要部位に集中し、四肢に関してはヘキサギア搭乗時の運動能力を担保するため外観への大きな変更はなく、膝などの突出した部位の装甲が改められた程度となっている。
しかしインナースーツに張り巡らされた“人工筋肉”はパワーアシスト性能に大幅な向上が見られる。これはヘキサグラムが供給するエネルギーを過度に消耗し運用時間が短縮されることを前提に、その対価として高出力を得るというものであり、ポーンA1には装備不可能な重火器による戦闘能力向上を目指した結果であった。
このシステムは概念的にはレイブレード・インパルスの「共振励起」に近いものと言え、後に続く白堊理研によるエクスアーマータイプの研究へも引き継がれている。
加えてポーンA1から大きく変更された点にマウントアームの追加がある。拡張プラットフォームとパワーアシストを兼ねたこの装置は一基を標準装備とし、ユニット構造による分割・換装によって運用方法に柔軟性を持たせている。当然ながら他のアーマータイプへの互換性も持っており、シールドやチャージキャノンなど本来は車載で運用すべき重火器をはじめとした各種装備を懸架しKARMAによる制御システムと組み合わせて使用される。
当初、ポーンA2と呼ばれたこれらの装甲強化コンポーネントの多くは「ナイト」という名称によって統合され、リバティー・アライアンスは「アーマータイプ:ナイト」の量産を開始、各地へと送り届けた。ガバナーは新たな鎧を纏って難敵との戦闘に勝利した後、猛々しくその手に持つ剣を掲げるのであった。
搭載武器
- スパーダ重質量弾(大型刀剣)
- シールド
- マウントアーム
武装解説
コンバットヘルム電子戦強化仕様
ベースとなったポーンA1とよく似た外観でありながら実際には完全な新型となっている。これは装甲の強化が目的ではなく、通信能力や対電子戦能力、ヘキサギアとの情報連接能力などを強化した結果であり、ポーンA1との互換性も残されている点などからヘルムの装甲防御力そのものはポーンA1でも必要な水準を満たしていたものと考えられる。
パワーアシスト・増加装甲
機動性を第一義とした第三世代ヘキサギアに多く見られる開放型の操縦席は、ガバナーにとっては常に砲火に晒される危険地帯でもある。たとえポーンA1を装備していたとしてもその負傷や損耗は避けえぬものとなっていた。そのため、ナイトでは被弾する事が直接生命にかかわる胴部の重要部位に集中し重装甲化を施すことで生残性を向上し、逆に四肢に関しては騎乗戦闘時の運動能力を担保するためポーンA1から大きな変更を行わず、膝などの突出部位の装甲が改められた程度となっている。
しかし全身に張り巡らされた“人工筋肉”はポーンA1と比して破格の高出力を獲得しており、ポーンA1では満足に戦闘機動がとれないほどの重火器の携行を実現している。
ただし、これらの機能を歩兵サイズにまとめた結果として相応の代償もあった。
重火器を用いた単独での戦闘が効果を発揮するのは機動力の観点から騎乗戦闘時に限定され、高出力の対価として最大連続活動時間でポーンA1に大きく劣り、武装を除いても増加装甲を纏ったことによる重量増加は避けられず歩行による行軍時に携行可能な余剰装備重量(予備弾薬、医薬品、糧食等)、の減少などの弊害を招いている。
これらは長期に亘る汚染区域の探索行や長距離偵察・巡察といった低強度危険地域で野戦部隊が担う通常任務にはおよそ適さず、正に騎乗戦のみに特化した装備としての特性を表しており、ヘキサギア部隊以外ではほとんど使用される事はなく、爆発物処理班などの特殊な例を除くと極少数存在する重装歩兵部隊で採用されているのみである。この部隊は編制数こそ少ないが、戦闘が激化する局面に集中投入される。機関銃や重砲を手に隊伍を組み、重ライオットシールドを押し立てて前進する重装歩兵の集団は局地戦で大きな制圧力を発揮した。
スパーダ重質量弾
外観こそ大型剣器のそれであるが、実態はチャージキャノンの特殊な砲撃で用いられる重質量弾の弾体部分である。刀身を思わせる侵徹体と発射装薬の運動エネルギーを受け止める弾底ブロック、その二つを支える重元素芯の柄軸によって構成されている。
また弾体の柄軸を直接把持し、剣器として使用する例も見られる。侵徹体の鋭利な形状と重量に加えてヘキサギアによる運動エネルギーが上乗せされれば、例え対象がヘキサギアの装甲部分であっても打撃による内部浸透ダメージは大きい。熟練者が使用すれば非装甲部位の破断すら可能である。
シールド
近現代おいて兵士が盾を装備することは珍しいが、ナイトでは容易に交換可能な装甲材としての観点から大型の盾が採用された。しかしガバナーがマウントアームを介して機上で取り扱える重量には上限があり、増加装甲というよりも銃座に装着される防楯に近いものとなっている。それでも大口径榴弾の曵火射撃などこれまで数えきれない損害を出してきた危険な攻撃に対して一定の防御力を持つことには成功している。
歩兵戦では重ライオットシールドとして使用される。
チャージキャノン
短砲身の小型榴弾砲。輪胴弾倉を備え中折れ式の折り畳み機構によって可搬性を向上させている。使用弾薬は榴弾や成形炸薬弾、煙幕弾など低初速・低反動の物が多く、高速徹甲弾のような反動の大きい弾薬は使用できない。これは砲自体の特性及び歩兵サイズのプラットフォームから発射する上での反動制御上の制約によるものである。
第二世代ヘキサギアの時代には原型と呼べるものが既に存在しており成形炸薬弾を使用すればバルクアームαの装甲にダメージを与えうる程度の火力を持つが、本来は車載で運用すべき重火器であり歩兵部隊では多目的ロケットランチャーのような火器の方が好んで使用されてきた。ナイトでは連続射撃が可能な事とその重量に対する解決が得られた事から採用に至っている。榴弾や煙幕弾による軽迫撃砲的な使用法もあり、ヘキサギアの機上で用いる重火器としては収まりの良いものであったと思われる。装備に当たってはスパーダ重質量弾を用いた無砲身砲としての機能が新たに付け加えられた。
チャージとは突撃を意味し、直訳すると突撃砲となるが、従来のいわゆるアサルトガン(突撃砲:歩兵直協支援用の自走砲)とは全く異なる体系の兵器である。
重機関銃
従来の重機関銃に改修を施した重火器である。マウントアームと接続するハードポイントが増設されたほか、照準器などの情報がアーマータイプ及びKARMAと連接しており、マウントアームを介して間接的に照準や反動制御が補正される。これによって不安定な機上からであっても比較的精度の高い機銃掃射が可能となっている。
本来歩兵が運用可能な火器のサイズを逸脱しており、射撃も二脚や銃架を用いて行うものであったが、ナイトはマウントアームによって立射やヘキサギア機上からの直接射撃能力を獲得しており、機動的な運用を可能としている。
マウントアーム
装備者の挙動に併せて位置や角度を自動的に変える懸架装置。
パラポーン・イグナイトを参考にしたとも言われているが、標準装備は一基のみとし、代わりに分割・換装によって柔軟性を持たせている。電源はヘキサグラムによるものの旧式の電動機を複数用いており、この分散配置がアームの分割や結合を容易にしている。エクスアーマータイプの拡張義肢と比べると枯れた旧い技術の集合であり、それだけに現場からは高い信頼を得ている。
KARMAによる自動照準補正を含めてスマートガンシステムとも呼ばれるが、この機能を使用するには銃側でも対応している必要がある。
ジャッジメント・ラム
スパーダ重質量弾をチャージキャノンに装填した状態の近接格闘装備。通常は騎乗した状態で槍や斬馬刀の様に使用するものであり、通常の刀剣よりも重く対第三世代ヘキサギアに特化した武装だと言える。
チャージキャノンの薬室に専用の発射装薬を装入し、スパーダ重質量弾は先込め式で装填される。弾体の大部分が砲外に露出する無砲身型の砲構造であり、射程や命中精度は考慮に値しないほど低い。従って砲というよりもむしろ化学エネルギーを用いる形式の近接火器であり、近距離以遠での命中精度は非常に悪い。直撃時の破壊力には目を見張るものがあり、大抵の第三世代ヘキサギアの装甲から内部構造までを貫通しうる。砲や弾体は非常に重く嵩張る為に戦闘中にこれを再装填することは難しく、多くの場合では装填した状態で出撃し予備の弾体を各ヘキサギアが携行することはない。一度発射した弾体は侵徹体の大部分が損傷し弾底ブロックも砕け散っており、弾体としての再使用は不可能である。
このような特異な兵器が準備された背景には、破壊部位を局限して敵を無力化することを目的としている節がある。
しかしこの巨大な刀剣を弾頭として撃ち出すという常軌を逸した武装は第三世代ヘキサギアを相手にするガバナーにとっての“切り札”とも言える破壊力を持つに至った。ジャッジメント・ラムは俗称であり“最後の審判を下す”というイメージから得られたものと言われている。