ネイル・ワイズマン“ダート”
SPEC
TYPE | 霊長類型 火力強襲タイプ |
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SIZE | Standard HEXA GEAR class |
WEAPON | ・ヘキサギア本体 ■アイアンネイル トランスポーター内の予備パーツと補給部隊のフレームパーツで再構成した。パーツ不足と構造の簡略化のために親指がなくマニピュレーターとしては不完全だが、殴打と爪での攻撃に不足はない。 ■マルチプルガン&追加弾倉 両肩に装備された旧世代の中近距離用射撃武器。補給部隊が持ってきた武器の中から選別した。胴部に追加弾倉を装備しており十分な総火力を確保している。 ■トリックバイト ボルトレックスの尾を基本に、廃棄パーツや補給部隊から手に入れた基本フレームを追加して構成されたしなやかな尾。ロードインパルスのトリックブレードとほぼ同様の使用法が可能だが、直接的な攻撃より物体の保持を重視している。ガバナー二人+α程度の重量物の保持までを想定しており、自身の機体を支えるなどは不可能である。 ■頭部高精度複合センサー 前作戦で一部の機能が破損したが影響は小さく、ほぼ通常時と同様に使用可能。 ・メインガバナー ■スタニングランス BMI制御の負担を軽減するために手持ち仕様に変更された近接兵装。最大威力の選択肢を減らした代わりに扱いやすさを向上させている。 ■複合素材シールド 旧世代で用いられたヘキサギア用シールド。破棄されていたものを使用。アームはアタックバックラーのものが生きており、BMIで制御している。損傷したアタックバックラーの代わりに装備したが、重いためバランスの悪化を招いている。その分防御力は折り紙付き。 ・サブガバナー アーマータイプ ■マシンガン&追加弾倉 スケアクロウに用いられていたもの。対ヘキサギアにも十分な威力がある他、追加弾倉により弾数を確保している。アーマータイプと言えど銃本体と追加弾倉による重量増加は機動力の低下を免れない。 ■時限式大型梱包爆弾 補給部隊が持ってきた武器の一つ。大型且つ時限式でしか制御できないが、その威力は(適切に設置すれば)通常のコンバートキャリアーを再起不能にできるほどである。所持数は一つのみ。 ■ディセプション・リピーター搭載補助バックパック 補給部隊が持ってきた装備の一つ。ローズの頭部装備と比べると大型だが性能はほぼ同等。センサーの補助能力も持つが、ワイズマン従来のバックパックよりも能力は数段落ちる。 ■荒野迷彩マント 迷彩柄のマント。ただの丈夫な布であり、特殊な機能は持たない。しかしながらディセプション・リピーターとの組み合わせによる認識阻害能力は侮れないものがある。 サブガバナー パラポーン ■ストロングスナイパーキャノン 旧世代の対ヘキサギア用兵器。左腕を失ったパラポーンの彼が補給物資の武器の中から半ば冗談で『いいもン見っけましたよ!』と報告したところ、隊長が冗談を覆して実戦に投入できるようにしてしまった。 左肩の接続部と銃本体のハードポイントが“物理的に”ほぼぴったりであり、ワイヤーによる補強を追加で行ったことでかなり強固に固定されている。規格が全く違うため電子的な制御は後部のケーブルでの有線接続で行われている。 旧世代兵器ではあるものの威力、精度はブロックバスターのレールガンに匹敵する。代わりに弾速、連射速度、反動で劣り、特に反動は後部のスパイク無しでの試射の際に彼ごとひっくり返るほどであった。 精度自体は良いが、パラポーンのみの観測や制御では性能の三割も引き出せない。十割の性能を引き出すためにワイズマンともう一人のセンチネルの観測と、各種演算支援を前提としている。前線の観測をもとに狙撃対象を決定し、気象情報なども含めて弾道を並列演算。そしてパラポーンの全身の関節をワイズマンが制御支援することで高精密な狙撃を可能とした。 ■有線式大型梱包爆弾 砲身に括り付けられた大型爆弾。手元の有線端末で起爆できる。銃自体をかなり強固に固定してしまったため有事の際にパージができなくなってしまった。その有事の際に砲身ごと爆破させて退避するための爆弾である。この用途のためにしては火力が高すぎるため、もし起爆させた場合は本人への被害は免れないだろう。 |
PARTS | ヘキサギア ■ボルトレックス ■レイブレード・インパルス ■ブロックバスター ■バルクアームα ■スケアクロウ ■デモリッション・ブルート ■ブースターパック001 ■EXユニット 001 ■ガバナー パラポーン・イグナイト ■ガバナー パラポーン・センチネル ■ミニフライングベース フレームアームズ ■フレームアームズ フレームアーキテクト リニューアルVer MSG ■パワードガーディアン ■コンバートボディ ■ストロングライフル ■リボルビングバスターキャノン ■グレイヴアームズ ■バイオレンスラム ■マルチミサイル ■連装砲 ■プロペラントタンク丸 ■ベルトリンク ■ジョイントセットA,B,C ■フレキシブルアームA,B ■フォールディングアーム ■エクスアーマーA,B,C ■ディティールカバーA ■ショートパイプ ■ニューフライングベース 個数省略 プラ材 ■5mmプラ棒(腕関節、腿関節に使用) ■WAVE オプションシステム K・ノズル(ガバナーの首後ろ、可動範囲拡大加工のため使用) 小物、雑貨 ■結束ワイヤー(センチネルの装備に使用) ■キムワイプ(センチネルのマントに使用) ■近所で拾った石 ゲスト出演 ■ボルトドロップ |
機体解説
『アウローラI型の上に大きな影が落ちる。見上げると、高速で飛行するヘキサギアがオールイン・ジ・アースに向かっていた。』
オールイン・ジ・アースを中心に展開されているこの戦場は混沌の様相を呈していた。
ネイル・ワイズマンもこの混沌を形成する要素の一つであり、飛び交う銃弾を躱しながら重い拳を振るう。
交戦中のソリッド・インパルスからの一撃を寸で躱し、ワイズマンが左へ跳ねる。砂煙に紛れ、次の一撃のタイミングを伺おうと──
〈警告 10時方向 適性反応〉
機体のKARMA──ネアンが警告すると同時に砂煙の中から巨大な腕が伸びてきた。『アクゲキの巨大なギガントナックルがネイル・ワイズマンの腕をつかむ。』
「旧世代ヤロー!待ちやがれええええ!!」
アクゲキの後方に左腕を失い満身創痍のパラポーン──ガラゴが走ってくるのが見える。ガラゴにアクゲキの相手を命じたのはメインガバナーのイグナイト──リーマーであったが、その目論見は外れた。アクゲキにも損傷は見受けられるが、致命傷には届いていないものばかりだ。
「一人では荷が重かったか──くっ!」
『旧式ながらパワーでは第三世代ヘキサギアに劣ってはいなかった。両手を使ってその動きを封じる。』このまま力比べをしていても事態の好転は望めない――リーマーはアクゲキを直接攻撃しようと立ち上がり──
「適性反応!上です!!」
機体に残っていたアーマータイプセンチネル──ロリスが叫ぶ。
リーマーが視線を上げた。『アクゲキを踏み台にして軽快な動きのソリッド・インパルスが跳び上がり、ネイル・ワイズマンの頭上から襲い掛かる。』
ガトリングの銃口がリーマーを捉える。防御を意識すると同時にBMIが反応し、アタックバックラーが可動する。『ネイル・ワイズマンのガバナーの一体を狙ったガトリング砲が猛射を浴びせ、』アタックバックラーを吹き飛ばす。続けざまの『グラビティコントローラーによるプレス攻撃で本体フレームは異音を立てた。』
──戦闘続行不可能──
リーマーは即座にそう判断した。
「スモークグレネード展張!両腕部パージ!離脱するぞ!!」
『ネイル・ワイズマンはスモークグレネードを展張、その両腕を切り離し煙幕に紛れて離脱した。』
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──
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〈──機は──のため離脱。────は──により大破。ガバナー──は撤退成功、健在。
──は──ながらも────し撤退。ガバナー──も健在。
──私達、ネイル・ワイズマンは両腕を損失しつつも撤退。ガバナー三名健在。
そして、回収目標であるオールイン・ジ・アースは大破。現在LAによる解析および回収作業の準備が実行されているとの見解が有力〉
トランスポーター内のネイル・ワイズマンとそのガバナー達は、今回の作戦の被害報告をネアンから受けている。
作戦終了――オールイン・ジ・アースの大破からおよそ1日が経過していた。損傷を受けた機体やガバナーは多かったが、撤退できた者はこうして各トランスポーターで修復やメンテナンスを受けている。
報告を受け、ロリスが口を開く。
「これだけの被害を出しながら作戦失敗とは……」
「まー落ち込むなってロリスくんよー。逆にこれだけで済んだ、とも言えるんじゃねーの?あんなデカブツまで出張ってきたんだぜ?えーっと、名前なんつったっけ?」
「……レイブレード・グライフだ。お前はもう少し落ち込めガラゴ。
……俺がLAを抜ける前に少しだけそれらしい機体の噂を聞いたが、あの噂は本当だったようだな。当時は眉唾だったが……。
だが、そんな機体がなぜこの戦場に現れたんだ?回収目標はそれほどまでに重要だったのか?」
ワイズマンのメンテナンスを手伝っていたリーマーがその手を止めずに話す。
「回収目標オールイン・ジ・アースについての情報は、イグナイトの俺ですら断片的なものしか与えられていなかった。実際にはもっと重要な“何か”を搭載した機体で、LAがそれを掴んだ、と見るのが妥当だろう」
〈同意。私の権限で閲覧可能な情報はリーマーと同様、有益な情報はありません〉
「でも隊長ー、それだけ重要かもしれない試作機のくせにあっさり引き下がり過ぎじゃないっすか?LAが回収作業やってるんスよね?」
「推測と言う体ではあるが、十中八九回収作業中だろうな。残存戦力では妨害もままならないというのは分かるが──」
〈リーマー、上層部から通信です〉
「おっと、繋いでくれ」
リーマーが話を止め、上層部と通信を交わす。BMIを通しているのかガラゴとロリスには通信の内容は聞こえない。しばらくの通信を終えると、リーマーが口を開いた。
「──どうやら上も、ジ・アースをそのまま見過ごすつもりはないみたいだぞ」
リーマーは上層部がオールイン・ジ・アースの奪還または破壊を目論んでいること、そのために必要な準備が進められていることを二人に伝えた。運搬の予測ルートとその周辺の地理情報も、いくつかに絞られて提示されていた。
「そして、前作戦に参加したものの中で復旧可能な者は迅速に作業を行い、作戦への参加を求む、皆様の力を貸してほしい。……だそうだ」
「……隊長、俺は反対します。動くことができる状態とはいえ俺たちは手負いです。要請があったからと言って急ぐべきではありません」
「なんだぁ~?ロリスくんはビビっちまったのか?」
「言っとけ。俺は現状を考えてそう判断しただけだ」
「隊長、俺は賛成するぜ。これは言ってみれば延長戦なんだ。試合が終わってねーんだったら続けるしか無いじゃないっすか!」
「ふむ、分かれたな。
ネアンはどっちだ?」
〈返答拒否。私はあなた達の判断を優先します。
──ですが、追加情報によると『支援は惜しまない』とのことで補給部隊の手配が緊急で展開中。汎用的なパーツであればこの補給部隊を待つことで一定量を使用可能。時間を要しますが作戦に耐えうる機体を再構築することは可能と判断〉
「なるほどな……となると、最終的に俺の判断で決めても良さそうだな。
──作戦に参加するぞ、いいな?」
「おっしゃあ!!」「隊長、よく考えてください」
ガラゴとロリスの声が重なる。
「まぁまぁ落ち着け。
補給部隊が来る以上、作戦参加は無謀なことじゃない。しかも機体の大半が残っているなら尚更な。ワイズマン自体も一部フレームの換装が前提の機体だ。変化する作戦に合わせるのは得意な方だ。それにな──」
リーマーはあの時の言葉を思い出す。
──MSGが掌握されたあの時、基地内で聞いた言葉を。
『私にはあなた達が必要です』
「俺は頼まれると断れないんだよ、ははっ」
リーマーは笑ってそう答えた。
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試作機回収作戦──通称「熱砂の暴君」──に参加したネイル・ワイズマン リーマー機は、その戦闘で両腕を切り離し撤退した。本機はそのネイル・ワイズマンを現地のトランスポーター内で緊急改修した機体である。トランスポーター内の予備パーツ、戦場での破棄パーツ、補給部隊からの改修用パーツ、作業用のスケアクロウ、これらのパーツを中心に再構築された。
本来のネイル・ワイズマンの腕部フレームは緻密な設計により瞬発力と腕力を両立させていた。現場でこのフレームを一から再構成することは不可能と判断し、汎用フレームとスケアクロウの脚部フレームを流用して腕部を再構成する方向性がまず決定した。ソリッド・インパルスの攻撃を受けた胴部フレームの損傷も応急処置を施したが、完全な修復は不可能だった。損傷部の保護のために一定以上の装甲が必要と判断。上記のフレーム事情と合わせて装甲トルク重視の機体に再構築された。低下した瞬発力を補うためにネイル・ワイズマンの換装形態“テイル・ワイズマン”に似せた尾“トリックバイト”をボルトレックスの尾と汎用フレームで構成。最終的に高装甲、トルク重視、ゾアテックス由来の機動力と、デモリッション・ブルートに近しい機体性能となっている。
被害状況、作戦環境、作戦目標を鑑みてサブガバナーは偵察工作寄りの装備から火力支援寄りの装備に変更された。特に損傷の激しかったパラポーンのガラゴは特殊な後方支援装備に再構築されている。損傷の少ないアーマータイプのロリスは前線の火力支援の要である。トリックバイトにより“配達”された彼はマントとディセプション・リピーターにより一時的に身を潜め、適切なタイミングでワイズマンとのクロスファイアを行う。装備重量により低下した機動力はトリックバイトでの“回収”でいくらか補われる。可能であれば輸送トレーラーの隠密爆破も想定しているが、あくまでも主目的は火力支援である。
戦闘レンジが更に縮まり、ひとたび格闘戦となれば元のネイル・ワイズマンと同等の格闘能力を発揮できるだろう。装甲と腕力に任せた戦闘方法は、元のネイル・ワイズマンとは少々違った獣性を感じさせるものである。この際ロリスはトリックバイトで保持され、多方向からの射撃支援を行うことも想定されている。
従来と同程度(部分的には従来以上)の戦闘力を再構築することに成功したが、これは二人のサブガバナーへの戦闘依存度を高めることでなし得ている。従来の偵察工作任務適性が格段に低下したのはもちろん、ガバナー3名と機体のKARMA、全員の連携が密に行われて初めてこの戦闘力を発揮できることは留意されなければならない。
“テイル・ワイズマン”
ネイル・ワイズマンは一部フレームを換装することで作戦に合わせた機体性能への変更が可能である。テイル・ワイズマンはしなやかで細長い前脚とその前脚ほどに太くそれ以上に長い尾を併せ持つ、機動力重視中距離戦形態である。3本目の腕とも言える尾を利用した機動力は立体的な地形の適正を最大限に高めている。腕力の低下により格闘戦適性はいくらか落ちるため、本体に十分な射撃戦装備を備えることを基本とする他、尾を利用したサブガバナーとの火力連携が重要視される。
ガバナー リーマー
ワイズマンのメインガバナー。壮年の男性。負傷部分を義体へ換装していき、ほぼ半身が義体となった。若い頃はMSGの治安維持部隊で活躍しており、SANATのMSG掌握を実際に体験している。
彼は掌握中に語られたプロジェクトの理念よりも「強大な力を持つものが小さな我々の力を求める」事に大きく心を揺さぶられ、SANATに協力することを決める。その後、VFの第一陣としてジェネレーターシャフトの支援を受けた愛機のバルクアームを駆り、最初の任務である結晶炉襲撃を成功させる。
長きにわたるLA対VFの戦争で活躍するが、結晶炉防衛任務の際にKARMA搭載ゾアテックス機の初襲撃に遭遇し機体は大破、自身も大きく負傷する。療養中にボルトレックス工廠の襲撃が成功。これまでの功績を考慮され鹵獲KARMA搭載ボルトレックスの配備が決定する。獣の時代の到来を文字通り肌で感じた彼は愛機のバルクアームに別れを告げ、新たな機体と“ネアン”と名付けたKARMAとともに戦線へ復帰する。
ボルトレックスを駆る彼らは更に功績を上げ続け、十数か月前に特注のイグナイトの配備と、指揮に適したネイル・ワイズマンの配備が決定する。サブガバナーの選定はリーマーに委ねられ、幾多の候補の中からガラゴとロリスを選抜し、現在に至る。
経験に裏付けされた落ち着きを持つ一方、冗談も交えるおちゃめな一面も併せ持つ。
ガバナー ガラゴ
ワイズマン右腕担当サブガバナー。青年代の男性パラポーン。
当時時点で汚染範囲外だった結晶炉を望む都市の生まれで、時間経過による汚染拡大によって強制退去(時系列では第3世代登場後)を経験している。汚染を止められないこの星の未来を理解しており、プロジェクトを成功させるという明確な意思を持ってVFに入隊した。
入隊後即情報体となり、いくらか実戦を経験するものの勢いが空回りしてしまい、情報体といえど被弾が多すぎるために注意を受ける。この噂がリーマーの耳に入り、ネイル・ワイズマンのサブガバナーに抜擢される。
お調子者ではあるが芯の強い心を持ち、目的のためなら何事も全力で当たる。戦場では全力で当たりすぎて大破して返ってくこともしばしば。リーマーの助言とネアンの補助によりいくらかマシになってきている。
ガバナー ロリス
ワイズマン左腕担当サブガバナー。ガラゴとほぼ同年代の青年男性。
スラム街の生まれであり、幼少期から窃盗や暴力を繰り返しながら生活してきた。LA発足後は食い扶持の確保のために軍へ入隊する。しかし配備された部隊がいわゆる過激派と呼ばれるような部隊であり『SANATは悪、LAこそ善』と極端な思想であった。第3世代活躍の報が入った部隊は悪い方向に士気が上がり、より危険な戦場へ赴くようになる。何度かは作戦を成功させるもののついに戦況を見誤り、部隊は壊滅的な被害を受ける。運良く部隊とはぐれ生き延びたロリスはLAから離れることを決意。VFに投降し、兵士になりたいと告げる。
一定期間の検査でスパイでないことを確認され、監視役をつけた上で何度か実戦に投入される。監視期間が終わらない間にリーマーが彼を目につけ、監視を引き継ぐと同時にサブガバナーに抜擢される。
単純に暗い、と言うには違う雰囲気を漂わせており(ガラゴ曰く「人生楽しくないぜオーラ」)、笑うことはほぼ無いが呆れたり怒ったりはする。LAと決別したもののプロジェクトの理念にはあまり賛同できておらず(特に機械の体に拒否反応がある)、今は生きることが最優先だ、と問題を先送りにしている。
普段から警戒心が強く、部隊の中で被弾率は最も低い。部隊全体の被弾率低下にも貢献しており、この警戒心はネアンの成長に良い影響を与えていると見られている。
鹵獲KARMA ネアン
初期ボルトレックス由来の鹵獲KARMA。システム音声は女性型。
リーマーがボルトレックスに中遠距離用ストロングキャノンを追加装備した機体を駆り、前線の指揮を取りながら自身も積極的に戦闘を行うスタイルであったため、戦闘面であればなんでもそつなくこなすような優等生タイプのKARMAへと成長している。ネイル・ワイズマンに搭載を変更し、二人のサブガバナーの支援を追加で行うことになった際も、まるで今までずっと搭載されていたかのように制御及び支援してみせた。
ガバナーとのコミュニケーション能力はあまり成長しておらず、搭載初期の事務的なやり取りから大きく変化していない。これはKARMA搭載時点でリーマーの実戦経験が十分蓄積しており、良くも悪くも彼の精神面が安定していたためだと考えられる。しかしネイル・ワイズマンに搭載を変更され、ガラゴとロリスが部隊に加わってからは変化が見られる。機体の変更と二人の若いサブガバナーという不安定な要素が加わったことでネアンの成長が促されているようだ。
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「……よし、機体の再構築はこれで完了だな」
長時間の改修作業を経て、リーマーは機体の外部チェックを終えた。ガラゴとロリスは別の場所で各自の装備のチェックを行っている。
ネイル・ワイズマン“ダート”はゾアテックス形態でKARMAを休止させており、チェックを終えたリーマーが休止状態のKARMAを再開させた。機体のヘキサグラムが励起し、“鉄の塊”だったものが“機械仕掛けの獣”へ変化する準備が始まる。
〈──KARMA再開。機体の再構築を確認。機体構成の再走査を行います〉
「おう、やってくれ。外部に問題は無かったぞ」
〈了解〉
ネアンがいつもの口調で返事をする。全身の感覚を確かめるように、各部を曲げ伸ばし、関節を可動させていく。
〈──これは……〉
ネアンがなにか言うのと同時にワイズマンの動きが止まる。走査の終了にしては少し不自然なタイミングだ。
「どうした?トラブルか?」
〈否定。機体構成の走査に問題はありません。ですが──〉
「ですが?」
〈ですが、この形態とは別のゾアテックスの発現を確認。
それも非常に高い獣性を持つ形態です〉
「別のゾアテックス……?高い獣性……?どういうことだ?」
この機体はビークルモードとゾアテックスモード、各一種を想定していた。他のゾアテックスの発現とは全くの予想外であり、高い獣性ともなれば尚更だった。
〈改修により生じた「純粋なネイル・ワイズマン」との差異、及び変更された関節構造により発現したものと予測。
その他は不明な点が多く返答不可。ですが、現在の私が制御を失うほどの獣性ではありません。形態への変形と確認を推奨〉
「このままでは何も分からないしな……。
よし、やってくれ。くれぐれも暴れてくれるなよ?」
〈肯定。
変形、開始します〉
リーマーが僅かな不安と大きな興奮を抑える中、ワイズマンは未知の獣へと変形を始める。
肩が上がり、腕の位置も胴に寄る。地面を押さえていた拳は開かれ、太い前脚と爪が力強く大地を掴む。胴が下がり、顔が前を向く。
胸や肩を覆っていた装甲は移動し、まるでたてがみのように展開する。胸を覆っていた大きな装甲は大きな丸い胴の様になった。
後脚は伸ばされ、腰が上がる。腿で大きく回転し、関節の位置や向きを変えていく。
今まで揺れているだけだった尾の動きが変化し、各部をひねり、尾の先が持ち上がる。その尾の先はまるで見据えるかのようにこちらを向いた。
唯一変化のないワイズマンの顔が動き、こちらを向く。いつもと変わらない頭部が非常にアンバランスに思えた。
〈変形完了しました。リーマー、いかがですか?〉
リーマの眼前に、元のワイズマンとはかけ離れた姿となった“得体の知れない4足の獣”が現れた。その姿にリーマーは畏怖を覚える。
「あ、ああ。何というか……歪、だな」
〈肯定です。現在、部位ごとの特性は大きく異なるものが混在しています。
変形前と同じ特性を表しているのは頭部とその周辺のみです〉
「……キメラアダプト、ってやつか」
〈はい。複数の特徴を機体に宿しつつも、安定した性能を発揮するアセンブルの総称、それがキメラアダプトです。この形態は“安定して高い獣性を発現”しています。
この獣性を制御しきれば、従来の形態を優に上回る戦闘能力を発揮するでしょう。
──ですが、これだけ高い獣性です、私の処理能力のほぼすべてをその制御に回す必要があります〉
「ガラゴとロリスの支援は出来ない、と。──いや、同時に二人からの支援も望めなくなる、そうだな?」
〈肯定です。支援がなければまともに動けない現在のガラゴはもちろん、ロリスも私達との繊細な連携を前提とした装備となっています。十分な支援ができず、繊細さを欠いたままの連携では前線で戦うロリスが真っ先に被害を受けます。彼の被害を前提に作戦を立てるわけにはいきません。
この形態を発現した時、頼ることができるのはこの機体とKARMAとしての私。
そしてリーマー、あなただけです〉
「……」
〈基本的には従来のゾアテックス形態での作戦遂行を推奨します。不確定な要素はできる限り排除されるべきです。ですが、LAの伝説的な機体すら関わったこの戦場。何が起こるかなど誰にも予測できません。この形態でなければ打開できない状況も発生するでしょう。
リーマー、私にはあなたが必要です。共に戦ってくれますか?〉
リーマーはMSG掌握時のことを思い出す。
強大なはずの存在が小さな自分の力を頼る。今回も同じだ。否応にも心が揺れる。
「……お前も、俺の動かし方がわかってきたみたいだな」
〈ええ。長い付き合いですから〉
「ああ、分かった。乗りこなしてやろうじゃないか!」
リーマーはワイズマンに拳を向ける。ネアンは拳ではなく大きな爪を重ねてきた。
〈最善の結果はこの形態を発現させずに作戦を成功させることです。お間違えの無いように〉
「わかってるよ。大ごとにならなければそれがいい。
……おまえ、なんか口調変わったか?いつもはもうちょっとそっけなかった気がするが」
〈高い獣性がコミュニケーション能力に影響しているようです。この形態を解けば元に戻るでしょう〉
「うーん、今のほうが親しみがあっていいなぁ」
〈では、この形態を維持しましょうか?〉
「それはちょっとなぁ……」
〈同感です〉
2つの短い笑い声が、トランスポーター内で小さく響いた。
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“Code【И】”
現場での改修による歪みが蓄積された結果発現した、ネイル・ワイズマン“ダート”第二のゾアテックス形態。コードИ(イー)と読む。
トランスポーター内でその発現が確認されたのみであり、高い獣性を備える事、制御に処理能力の大半を割かなければならないだろう、という事以外はほぼ未知数。
彼が実戦でこの形態を発現させるかどうかすら、今は誰にも分からないだろう。
BATTLE POINT
作品応募動機・コメント
ミッション01「熱砂の暴君」投稿機体「ネイル・ワイズマン」のミッション02用現地改修仕様となります。
……設定盛りすぎ?設定集読んでたら湧いてきちゃうから仕方ないね(
ワールドオブヘキサギアの各項目とにらめっこし、SNS上でガバナーの方々と考察しあった上で、練り込める設定を思う存分練り込みました。資料集以外にミッションエピソードからも引っ張ってきてる部分があります。これだけ詰め込むと「世界観の重要項目に深く関わる内容」に触れていないか心配(各ガバナーの過去……特にMSG職員の扱い)ですが……自重できませんでした(
KARMAとガバナーの微笑ましいやり取りも……これはもう短編小説ですね……もういいのです、すべて自重しないと決めました。Code【И】の形態確認シーンは自分で書いてて「この二人の関係いいなぁ……」とか思ってました。
アセンブルの出来もかなり満足です。通常形態の太いプロポーション、状況や作戦に合わせたサブガバナーの装備、完全変形ながら【И】のシルエットの変化具合、我ながらどれもよく出来ました。現地仕様にしては左右対称で整いすぎた気もしますが、そこだけはかっこよさ重視で……。
画像については……こ、これは横長のメイン画像の余剰スペースにおまけで色々詰め込んだだけだから(震え声)。ガバナーも形態も多いと載せたい画像多すぎて……すみません。
エピソード参戦前提のような発言で申し訳ないのですが、「この改修にかかった時間」と「Code【И】の戦闘力」についてはこちらで設定してません。どのタイミングで改修が完了したか、【И】の戦闘力はどれぐらいか、については公式側で妥当かつ物語を盛り上げられる値を設定していただきたいです。
連続参戦という高いハードルの上に設定盛りまくりという枷を自ら背負ってますが、なんとか越えて参戦できることを祈っています。
今回の総文字数は約11000字(記号込み)です!こんなことになるとは自分も思ってませんでした!
お時間を割いてここまでお読みいただき、本当にありがとうございます!!
GOVERNOR DATA
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- UPDATE2019/03/12