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WORLD ヘキサギアの世界

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EX EPISODE MISSION02
[魔獣追討]
Chapter: 05 ヴァリアントフォース

黒い装甲色の四脚獣型ヘキサギア「スラストハウンド」は先の戦闘で姿を現した狙撃機を追っていた。
鬱然とした森を抜けて岩山に駆け登り大きく跳躍、渓谷の間に躍り出たスラストハウンドが月明りに影を落とす。
搭乗するパラポーン・イグナイトは周囲に潜むヴァリアントフォースの部隊と協力して、射撃時の砲声や通信妨害の発生源を複数の地点から計測し、既に最後に射撃した位置とおおよその足取りを掴んでいた。

 


 

高精度のレールガンを装備したヘキサギア「インパルス・レイフ《ブラックマンバ》」は、木立の間からひっそりと立ち上がった。

「こちらブラックマンバ。やはりリバティー・アライアンスの勘の良いガバナーが何か気付いたみたいです。念のためルートを変えるわ」

ブラックマンバのガバナー、ヘルガは短く定時連絡を入れる。
(……追ってくる黒いヘキサギアのガバナー、イグナイトだった。まだグライフの姿も拝めていないのに……まずいですね)

『ヘルガよ…』

ブラックマンバに搭載されたKARMA、シフは自らのガバナーに呼びかける。

『我らは追われる身となったか? だが、それも狩りつくすだろう……』

ヘルガの視界に重なるように、シフの分析した戦況レポートが上下にスクロールしている。
夜の闇へと紛れる黒い機体はやがて音もなく走り出す。隠密性に優れた機体は高度な隠密、電子戦そして遠距離射撃能力を併せ持ち、ヴァリアントフォースを虚空から一方的に狩る狙撃機である。

「はいはい。分かってますってば。でもグライフの戦闘データは持ち帰りたいのでそれまでは付き合ってくださいね」

インパルス・レイフは両前脚に搭載している「ホログラフィックプロジェクター」を起動する。自機の周囲にホログラムを展開し周囲の風景を投影する。電子的な欺瞞にも自信はあるが、高い獣性を発現している第三世代ヘキサギアは人間には理解できない感覚で察知してくることもある。油断は禁物だった。
姿を消した賢狼は静かに闇の中を移動した。
遠く、微かな砲声。
またひとつ、敵の数を減らしていく。

 


 

「「ドレッドノート」、進行はどうか?」

渓谷全体を見渡せる高度で飛行する「ソニックレイブン」からの通信が入る。
夜の闇は白み始め、薄い曙光が上空を飛ぶ小さな機影をぼんやりと照らしている。

「まだ射撃地点に向かっているところだ。予定していたルートが落石で使えなくなっている」

情報体の交信に音声はない。ただ互いの思考言語で意識の内に再生されるだけだ。
様々な部隊の情報が共有され、意識に重なっていく。

「鉱山都市の居留者はほぼ全員がこの地を離れるそうだ。残っているのは自警団と称する武装集団だけだ」
「さきほど、わが方の偵察部隊が西進するトランスポーターの車列を見つけた。やはり第4ゲートブリッジのようだな」
「標的はどの車両に積まれているのか?」

遠距離砲撃型ヘキサギア、ドレッドノートはグラグラと重い車体を揺らしながら第四ゲートブリッジのある地点を直接射撃できるポイントへと移動していた。

「―――重ねて繰り返すが、我々の目的はあくまでもオールイン・ジ・アースの回収である。そのために、レイブレード・グライフなる未確認機をまずは排除する」

かつてはリバティー・アライアンスに属しながら、戦い続ける為にMSGに身を投じその身を情報体へと転換した人物、ザイツェフ。

「諸君、ポイントにつき次第、こちらは主砲アースシェイカーの射撃に専念する。やつが戦闘態勢に入る前に仕留める。周囲の監視を怠るな。諸君らには良い仕事を期待している」

即座に応答する情報体がいた。ドレッドノートに随伴する「メイルクラッシャー」のガバナーだ。

「貴方は射撃に専念してください。貴方のことは我々が護ります」

短いメッセージが送信されてくると、ザイツェフは安心したように交信を終了した。
過剰なまでに武装を背部に施した中距離攻撃特化機体メイルクラッシャー。その名の通り、高強度な装甲目標を破壊しうるモノとして、圧倒的な瞬間火力を有する。
その重武装ゆえに射線の通る開けた土地での防御戦であれば、高速の第三世代ヘキサギアでもいち早く発見し、先制してプラズマキャノンの弾幕を張れるのだ。
リバティー・アライアンスの高機動型を近づけない。たとえあの忌々しい白い獣―――レイブレード・インパルスが出てきても、任務を成功させる。
そう誓うのだった。

 

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