Loading...
DataAccess ...

WORLD ヘキサギアの世界

SHARE

EX EPISODE MISSION02
[魔獣追討]
Chapter: 11 誕生ゾアントロプス・フリーク

指示に従ってたどり着いた場所は、地下の薄暗い空間であった。

 

これが「レイブレード・インパルス」……

実物は初めて見る。
そもそも第三世代ヘキサギアはおろか、アーマータイプですらまともに揃えられないロブがこれと出会う機会など本来あり得ないことだ。それどころか出来ることならば一生関わりあいになりたくないとすら思っていた。だが、ロブの装備にやすやすと侵入してきた謎のKARMAの気配が常に付きまとって監視されていたのと、正直いざとなるとロブ自身も自らの好奇心に抗えなかった。

『おまえか、我が盟主が寄こしたという戦士は』

精悍な頭部をもたげたそれが、重々しい口調で言葉を紡ぐ。
どうやらKARMAによって様々な個性があるらしい。ロブが以前に見かけたKARMAはこんな話し方ではなかった。
立ち上がり、値踏みするようにロブの周りを歩き回るレイブレード・インパルス。

「や、やあ。俺の名前はロブ。あのゾアントロプスに言われて来たんだが……何をすれば良いかはKARMAが教えてくれるって、オマエのことか? 」
『我が盟主は、何故おまえのような男を選んだのか。理解に苦しむ……。まあよい、我が名はゲド。この「レイブレード・インパルス」に宿りし魂である』
「……あ、あぁ。よろしくな、ゲド 」
『おまえはただ我の背に跨っておれば良い。役目を終えるその時まで』

俺には何も期待してないっていうのか?
ロブの思考を見透かしたかのように、ゲドは言葉を継いだ。

『お前はこれから我とともにアナデンへと向かう 。そこではおまえの方が適していることもあろうから、その時は適切に行動せよ。我は走ることと殺すことしかできぬ』

そう告げると“ついてこい”とでも言わんばかりに静かに歩き出す。
いくつもの隔壁を越え案内された場所には、あの結晶炉の獣人の姿があった。

「これは、ゾアントロプスのアーマータイプ……なのか?」
『そう、とも言えよう……だがお前の力では到底、我が盟主には及ばん』

そう言ったゲドの声は盟主と仰ぐ男の力を誇らしげに語り、そしていくらか苛立っているようにも感じられた。

『……纏え。仮初の力を以て、我が盟主の影として振る舞うことを許す』

獣のような息遣いを背後に感じる。それはレイブレード・インパルスのものであり、あのゾアントロプスの気配でもあった。
震える手でアーリー79を脱ぎ捨て、ゾアントロプスと同じ外観のアーマーに自身の肉体を納める。
直後。
背部のヘキサグラム装填孔基部に並んだ端子が蠢きはじめ、脊髄に沿ってめりめりと突き刺さっていく。

「…………っ!」

ロブはその痛みに、自分が取り返しのつかない道に踏み込んでしまったことを悟る。
全身がひどく痛いはずなのに、狂いだした五感は何も感じさせない。皮膚の裏側が痒い。アーマーに締め付けられ、絞り出されたものが再びアーマーに同化していく感触。
身体が重い。なのに骨はこんなにも細い。
ヘキサグラムから変化した人工筋肉がロブの肉体を完全に覆い尽くし、気が付くと視界まで高くなっている。装甲ブロックが体表にボルト留めされていく。どれもひどく重いはずだが、人工筋肉のおかげか全くと言っていいほど重さを感じない。
ゾアントロプス……あんたは俺になにをさせるつもりなんだ……

「あんたは、こんな重いガバナーを乗せても大丈夫なのか?」

声すら変質していた。

『舐めるなよ小僧。その程度で我が脚が鈍ることなどありえん』

そう告げたゲドの声音はとても誇らしげで、ロブは自分自身とは正反対だと気付いた。
俺もそんな風に自分を誇れるようになりたいよ。
もし生き延びることができたなら……自分もすこしは変われるだろうか。
変わり果てたこの身体のように。

WORLD 一覧へ戻る